明日、前夜式
今日、悲しいことがありました
M兄(74歳)が天国へ召されました
数年前、糖尿病から片足を切断せざるを得なくなり、その後、ガンを発病、ずっと戦ってこられました
今はようやく、天国のイエス様の御元で過ごされていることと思います
思い起こせば、Mさんとの出会いは、13年前になります
教会へなんとなく通いはじめた頃、なかなか聖書を買えずにいた私に、Mさんは、
「なんか欲しいものは、ないか?」
と声をかけてくださいました
とっさに「聖書!聖書がほしいんです」と答えると、Mさんはちょっと驚いた顔をしながら、すぐに
「よっしゃ、今すぐ買いにいこ!」
とすぐその足で、教会の中に常設されている書店へ行き、小型の新改訳聖書を買ってくれました
それからも、いつも会うたびに、
「食事行こう!何食べたい?食べたいもん言い。おいしいもん食べさせたるで」
と声をかけてくださって、よく友人たちと一緒に、ご馳走していただきました
8年前、家族の反対を押し切って神学校へ入学する道を選んだ私は、大量の荷物をどうやって学校まで運ぼうか思案にくれていたところ、Mさんが、その役を買って出てくれました
Mさんが私の自宅へ迎えに来てくださって、布団やらスーツケースやらを車に運び込んでくれていると、一か月ほど前から一言も口をきいてくれなかった母が、家の奥から飛び出してきて、
「本当にすみません、この子をどうかよろしくお願いします」
と、泣きながら、Mさんに何度も何度も頭を下げました
その後、車を運転しながら、Mさんは
「ええお母さんやないか」
と、涙目になっておられました
それからも、Mさんは「お母ちゃんはどないしてんや」と、まだ救われていない母のことを、いつも気遣ってくれました
思い起こせばキリがないくらい、たくさんの思い出を頂きました
今日、Mさんの容体が危ないと聞いた時、私はたまたま教会にいました
教会の人たちが病院に駆けつける車に、私も同乗させてもらうことができました
病院に着いた時、Mさんはまだ意識もはっきりしておられて、私たちが駆け寄って手を握りしめると、はっきりした声で、
「ありがとう」
と言ってくれました
Mさんの娘さんのAちゃんが、あちこちに電話をかけながら、Mさんの汗をふいたりして、甲斐甲斐しくお世話されていました
Mさんの親友である、お隣の教会の牧師先生と奥様が来られて、奥様が、「Mさん、もうすぐ春ですよ」と言いながら、Mさんに聖歌『原に若草が』を歌い出され、私たちも一緒に賛美しました
その後、どんどん容体が悪化していき、病室にはモニターが運び込まれました
若い看護師さんは、モニターの処置が終えた後も、
「ついこないだ、私が旅行に行ってきた話を聞いてくれてたのに」
と、涙目になりながら、Mさんの手をしばらく、握っておられました
Mさんの御友人だという、韓国人の牧師先生が駆けつけて来られ、「祈ってもよろしいでしょうか」と、Mさんのために祈ってくださり、祈り終わると、それまで苦しそうに息をしていたMさんの様子が落ち着きました
やがて、モニターのてっぺんにある、危険状態を知らせるランプが、消えなくなりました
私はどうしても、Mさんに御礼が言いたくて、Mさんに駆け寄って手を握り、
「Mさん、Mさん、本当にありがとうございました。Mさん、私に聖書買ってくれて、ありがとうござました。KBIへ行くとき、荷物運んでくれて、ありがとうございました。韓国旅行も、一緒に行けて、感謝でした。いつも、私のお母さんのこと、気にかけてくれて、ありがとうございました。Mさん、また会いましょうね」
その後、大泣きに泣きました
Aちゃんが、反対側の手を握りながら、
「お父さんは、娘がいっぱいいるね」
と、優しく話しかけていました
気が付くと、お医者様が来られていて、
「4時33分 お亡くなりになりました」
と、告げておられました
病室が嗚咽で包まれました
廊下へ出て、心を静めていると、先ほどまでてきぱきと処置しておられた一人の看護師さんが、私をじっと見つめているので、軽く会釈すると、看護師さんは少しためらいながら、
「すごくいい方でした。様子を見に、カーテンを少し開けて、中を覗くと、笑って手を振ってくれました。いつも励ましてくれました」
と言って、泣いておられました
「そうですね、そういう方でした。私もいつも励ましてもらいました」
と、答えながら、Mさんは本当にすごいクリスチャンだったんだ、と改めて思われました
今年の1月、新年聖会で、Mさんは素晴らしい証をされました
後で聞いたら、お医者様からは絶対に無理だと言われていたそうです
でも、Mさんは信仰によって成し遂げられました
本当に素晴らしい証でした
昨年の11月、教会のバンクエットでも、Mさんは証をしておられました
証の中で、Mさんは、何度も何度も、
「教会はいいところです。皆さん、教会へ来てください」
と、おっしゃっていました
その姿が、今も目に焼き付いています
明日は前夜式です